2021.11.21 主日礼拝
ダニエル書 第7章13〜14節

ヨハネの黙示録 第1章4〜8節

ヨハネによる福音書 第18章28〜37節

「王であるキリスト」

ユダヤ人たちは、きょうの聖書箇所の前のところで、大祭司のもとで主イエスを尋問しました。彼らは主イエスを憎んでいました。彼らにとって神の教えを語る主イエスは邪魔な存在でした。主イエスが語る神の教えは彼らの信じる教えと鋭く対立していました。彼らは主イエスを激しく憎み、殺そうとしていました。しかし、彼らは、自分たちの手で主イエスを殺すことなく、総督ピラトの所に連れてきたのです。

 どうしてユダヤ人たちは、主イエスをピラトの所に連れて来たのでしょうか。29〜31節のピラトとのやり取りの中に、その理由が記されています。29節で「どういう罪でこの男を訴えるのか。」とピラトは問います。それに対して、ユダヤ人たちは「この男が悪いことをしていなかったら、あなたに引き渡しはしなかったでしょう。」と答えますが、これはちゃんとした答えになっていません。彼らは、「罪状なんかどうでもいいんです。あなたはいちいち詮索することなく、わたしたちの言う通りにすればいいんです」とでも言いたかったことでしょう。

 彼らはどうしてそのようにしてまで、ピラトによって主イエスを殺させようとしたのでしょうか。それは、彼らは自分の手を汚したくなかったのです。もし自分たちの裁判によって、自分たちの手で主イエスを殺せば、主イエスを救い主メシアだと思っている群衆が怒り出し、自分たちに敵意を向けるかもしれない。彼らはそう恐れたのです。

 主イエスを裁いてくれ、裁判にかけてくれというユダヤ人たちの求めを聞いたピラトは、官邸に入り、主イエスを尋問します。ピラトは「お前がユダヤ人の王なのか」と問います。ローマ帝国の総督であるピラトの関心はそこにのみあります。つまり、主イエスが「自分はユダヤ人の王だ」と主張するなら、それはローマ帝国のユダヤ人に対する支配を否定して自分こそが王だと主張しているわけですから、ローマに対する反逆とみなされるのです。ピラトのこの問いに主イエスは「あなたは自分の考えで、そう言うのですか。それとも、ほかの者がわたしについて、あなたにそう言ったのですか。」とお答えになりました。主イエスはピラトに、さらに語りかけられます。「わたしの国は、この世には属していない。もし、わたしの国がこの世に属していれば、わたしがユダヤ人に引き渡されないように、部下が戦ったことだろう。しかし、実際、わたしの国はこの世には属していない」。「わたしの国」と主イエスはおっしゃいました。ここで「国」とは原文では「王国」という言葉です。つまり「わたしの国」とは「わたしが王として支配している国」という意味です。主イエスは確かにご自分の王国の王であられるのです。しかしその王国は「この世には属していない」とおっしゃる。この世の国は、この世の力や権力によって出来上がっているが、「わたしの国」はそのような力よって成り立っているものではないということです。主イエスという王のもとには、この世の国とは違う王国が出来ているのです。

 そして主イエスはさらに「わたしは真理について証しをするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理に属する人は皆、わたしの声を聞く。」とおっしゃいました。主イエスは、真理について証しをするためにこの世に来られたのです。真理に属する人はその主イエスの声に耳を傾けるのです。「真理に属する人」とは、真理を受け入れ、それに従う人です。その人々は主イエスの言葉を聞いて受け入れ、主イエスが王であられることを信じて従っていくのです。そこに、主イエスの王国が築かれていきます。

 わたしたちに必要なことは、主イエスが証ししておられる真理をしっかりと信じ受け入れることです。その真理とは何でしょうか。それはヨハネによる福音書の3章16節に記されてある通りです。「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」。神がその独り子を与えてくださるほどにわたしたちを愛してくださっている、その神の愛こそ、主イエスが証ししておられる真理です。その神の愛は、主イエスが言葉によって証ししてくださいましたし、さらに十字架の死と復活によって実現してくださったのです。

 十字架と復活の独り子主イエスを信じて見上げ、洗礼を受けて主イエスと結び合わされることによって、わたしたちは主イエスと共に永遠の命を生き始めることができるのです。真理とは何か、という問いへの答えは、主イエスの十字架の死と復活においてはっきりと示されているのです。主イエスの十字架の死と復活を見上げることによってわたしたちは、神の救いの真理を知り、それによって新しく生きることができるのです。

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