2022．6.12 春の特別伝道集会 聖霊降臨節第2主日礼拝
ルカによる福音書 第5章1〜11節
「イエスがゲネサレト湖畔に立っておられると」と、今日の聖書の箇所は始まります。イエス・キリストが立っておられるところに群衆がその周りに押し寄せてきたとあります。「神の言葉を聞こうとして、群衆が押し寄せてきた。」イエス・キリストは、その群衆の中に巻き込まれてしまうことをお避けになろうとなさったのでしょうか。二そうの舟が岸にあるのをご覧になって、その一そうの舟に主イエスは乗り込まれて、少し漕ぎ出すように頼まれました。これらの舟はシモンという人の持ち舟でありまして、その人は漁師であったのです。主イエスは群衆から少し離れて、舟の上から、神の言葉、神の教えを語られたのです。その神の教え、神の言葉を語りを終えられると、このシモンという人に、「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい。」とおっしゃったのです。 彼らは漁師シモンだけでなく、何人かの漁師とともに、昨夜そのゲネサレト湖に漕ぎ出して、夜通し漁をしたということです。そもそも魚は昼間は取れませんで、夜中に漁をする、ということが行われていたのです。 5節に「シモンは、『先生、わたしたちは、夜通し苦労しましたが、何もとれませんでした。』」とシモンは答えています。しかし、シモンは神の言葉を主イエスのすぐ近くで聴いておりまして、そのことによって、「お言葉ですから、網を降ろしてみましょう。」と答えることができたのです。シモンは、イエス・キリストのすぐ近くで、神の言葉を聴いていたのです。そのことによって、シモンはヘトヘトに疲れていたにもかかわらず、沖に漕ぎ出して、網を降ろしてみましょう、と言うことができたのです。その網を降ろしてみたところ、6節にありますが、「おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった。そこで、もう一そうの舟にいる仲間に合図して、来て手を貸してくれるように頼んだ。彼らが来て、二そうの舟を魚でいっぱいにしたので、舟は沈みそうになった。」のです。一晩中プロである漁師の人たちが、漁に出て、網を降ろして魚を取ろうとしたにもかかわらず、一匹も取れなかったのです。イエス・キリストは漁の専門家ではなかったわけですけれども、イエス・キリストのお言葉によってその通りに網を降ろしてみたところ、大漁がもたらされた。そういう信じられない奇跡的なことが起こったのです。 そのことを目の当たりにして、シモンは、「イエスの足元にひれ伏して、『主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者なのです。』と言った。」とあります。思いがけない大漁であったということを経験すれば、まずは「普通はイエス様ありがとうございます」と大変喜んで感謝の気持ちを表すことが考えられますけれども、このシモン・ペトロは、喜びの気持ちを表したのではなくて、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者なのです。」と語ったとあります。なぜこのシモン・ペトロは、このようなことを言ったのでしょうか。このような大きな奇跡、圧倒的に大きな奇跡を前にして、ペトロは、神の光に打ちのめされたのです。この神の光、神の力に圧倒されて、自分自身が神様の前でいかに小さい。罪深いものなのか、ということを思い知らされたということなのです。この大漁を前にして、喜ぶよりも先に、神様のこの圧倒的な力に打ちのめされ、自分の罪深さを言い表すしかなかったのです。このことが、シモン・ペトロの人生を変える大きな出会いとなりました。 10節にありますが、「シモンの仲間、ゼベダイの子のヤコブもヨハネも同様だった。すると、イエスはシモンに言われた。『恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師になる。』そこで、彼らは舟を陸に引き上げ、全てを捨ててイエスに従った。」とあります。このイエス・キリストとの出会いによって、シモン・ペテロとその仲間は、全てを捨てて、イエスに従うようにされたのです。この出会いによって、この奇跡によって、イエス・キリストこそ神であり、救いはこの御方にしかないと彼らは気づかされたのです。 「すべてを捨てて」とありますけれども、彼らが捨てたのは財産、目に見えるものだけだったのでしょうか。彼らは、それまで自分の力で、自分の人生を切り開いて、自分の力で生きてきたと考えていたに違いありません。その彼らに対して、イエス・キリストは、「これからは、自分の力だけで自分の人生を切り開くのではなくて、神の恵みによって生きる者となるのだ」と主イエスはおっしゃりたかったのです。自分たちの力では、夜通し働いても一匹も、魚が取れなかったにもかかわらず、イエス・キリストのご命令によって、その御言葉を聴いて信じて行動したことによって、想像もできない程の大きな恵みを与えられたのです。「すべてを捨てて従った」とありますが、彼らは自分の人生は自分の力だけで切り開いて、やっていくのだという考え、その古い考えをも捨てることができたのです。神の御言葉を信じて、行動していく。そのことによって、彼らの人生は、180度転換させられたのです。わたしたちも、このわたしたち自身の人生を、自分の力だけで生きているかのように思い、日々いろんなことを心配し、悩み、そして自分の力の弱さに絶望してしまうこともあるのですけれども、わたしたちが生きていくのは、自分の力によることだけではなくて、計り知れない神様の恵み、そのことに依り頼んで生きるときに、わたしたちの重荷は降ろされ、神様に従って生きる新しい人生が開かれるのです。それこそが、わたしたちの人生を変える出会いと言ってもいいでしょう。主イエスは、わたしたちにそのように生きるようにといつも呼び掛けてくださっています。主イエスは御言葉によってわたしたちに語りかけ、出会おうとしてくださるのです。そのことを信じて、自分の力だけで生きるという古い考えを捨てて、神様の恵みに依り頼んで、イエス・キリストに従って歩んでいく新しい人生を送ることができるように祈り求めてまいりましょう。 閉じる